みんなの「うまい!」のために、というビールのCMのようなコーチングの話

「練習メニュー」という言い方があります。
メニューといえばレシピ。各種ドリルの練習方法などみていると、料理のレシピに似ているなと、前から思っていたので、少し整理して考えてみました。そうしたら思ったより共通点が多かった、ということが分かりました。

チャーハンを例にとると「中華鍋を熱して油をなじませ、溶き卵を入れて油となじませ、各種具材を入れ、ご飯を投入、一気に炒めていく」というような基本的な手順があって、加えて具材と調味料の分量などが示されます。
具材によっては、かにチャーハンとかレタスチャーハンなど、バリエーションが広がります。

そしてレシピがあれば、誰もがこの料理を再現してみることができます。料理の基礎がある程度はできていることが前提ですが。

一方、ラグビーの練習(ミニ、ジュニア世代)です。たとえば2対1の練習には「一定の広さのエリアを設定して、アタッカーが2人いて、前方のディフェンダー1人をパスで抜いていく」という基本があって、そこにタックルの有無やタックルありの場合のコンタクトの強度、プレー時間などがからんできて、設定しだいでいろいろなバリエーションが考えられます。

そして法則(?)を発見したのです。
●料理の目的は「旨いチャーハンをつくること」。
●ラグビーの練習の目的は「上手くなること」。
どちらも「うまい!」を目指しているという、なぞかけのような、CMのキャッチコピーのようなフレーズが導かれました。

同じチャーハンにも、多くのレシピがあるように同じ「2対1」にも、多くの練習方法がある

ところで、オーソドックスなチャーハンひとつとっても、実に多様なレシピがあります。ごはんは冷えているほうがいいのか、温かいものがいいのか。卵が先か、それともご飯に始めからまとわせてしまうか、ザーサイを入れるか入れないか、などです。

一般家庭のキッチンでは中華料理で必要とされる火力は得られない、という論理から「低温調理」というつくり方もあります。ずっと弱火でゆっくり調理して、最後だけ少し強火にするという手法です。もうレシピが丸ごと違うわけですが、完成するのは同じチャーハンです。

ラグビーの「2対1」も前述のように、設定項目がいろいろあります。タックルありで行うにしても、タグ、片手のタッチタックル、両手のタッチタックル、グラブタックル、フルタックルと、コンタクトのレベルはいろいろです。エリアの広さが広ければアタックに有利だし、狭くすればディフェンスに有利です。コーチからのパスやキックで始めたり、アタッカーあるいはディフェンダーが始めは背を向けていて相手が見えない状況から振り向いて始めるなどすれば、プレッシャーが高まります。「レシピを工夫してつくる」こともコーチの役割のひとつになってきます。

レシピがあれば再現できる?その練習さえ行えば、うまくなれる?

ところで、レシピさせあればおいしい料理がつくれるわけではない、というのも現実です。物事はそう単純ではない。レシピ通りにつくれたということと、その料理が美味しいかどうかは、あくまで別の問題で、これには説明の必要もないでしょう。

ラグビーの練習も同様ではないでしょうか。ある「2対1」の練習方法(レシピ)を選手に提示して行わせた場合、その成果が得られるかどうかは、レシピの善し悪しに加え、選手たちのコンディションとか、やる気とか、いろいろな要素が関わってくると思いますが、やはり成否を大きく左右するのは、現場でのコーチングの内容なのではないかと思うのです。

ひとつの練習方法(レシピ)でプレーさせたうえで、そのフィードバックからレシピを修正したり、強度を変えたり、適切なアドバイスをしたり、選手が気づくまで辛抱強く待ったり、そういったコーチの言動が大切なのではないかと思うのです。レストランにはシェフが必要だし、スポーツのプレーヤーにはコーチが必要なわけです。

以上、チャーハンのつくり方からコーチングのことを考えてみました。

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