指導方針を掲げる、ということについて

この春に創立50周年を迎え、在籍数650名という規模で活動している横浜ラグビースクールが、先日、『ラグビー指導20か条』という文書を発表しました。とても素晴らしい内容だと思いましたので、そのときにTwitterで紹介したのですが、ここで改めて取り上げたいと思います。

全文は上記ツイート内のリンクからご覧いただくとして、私がいちばん感銘を受けたのは、この種の文書はたいてい抽象的なものになることが多いなかで、とても具体的な表現がされている点です。かつ、内容もよく練られていて、他のスクールにもおおいに参考になる出来だと思います。

印象に残るフレーズをいくつか書きだしてみます。

  • 経験者や年配者達に言われた練習方法に疑問を持て
  • 感情だけで怒鳴りつけて育つ選手はいない。「叱る」と「怒る」の違いを理解すべし
  • 怒鳴ってばかりいる指導者は無能と見られていることを自覚すべし
  • 悪い噂は千里を一夜で走る。特に金銭面についてはクリーンにすべし
  • 試合に負けて大声で選手を叱責罵倒し、なおかつ腹いせにしごきもどきの猛特訓する監督・コーチは大馬鹿者で排除すべき
  • 選手に答えを与えるのではなく、気づきを与えるべし

といった言葉が並びます。一方でこんな文言も盛り込まれており、ユーモアも感じさせます。

「ラグビーチームの監督や責任ある指導者のような、ドえらく、しんどい仕事を引き受けようとする者は、心底子ども大好き、ラグビーバカな人間であることを自覚すべし」

このように、指導方針がきわめて具体的なところに感心したのですが、なぜ具体的な表現がいいのか──。その答えが、今日、この原稿を書く一方で読む機会のあった以下の記事にありました。

■スポーツする全ての子どもたちにアスレティックトレーナーのサポートを届けたい〈前編〉
https://torch-sports.jp/article/athletic-trainer-support-for-all-children-1st
サブタイトルは「脱『経験と勘』新時代スポーツ指導への提言」です。

記事は、Jリーグ、なでしこジャパン等で活躍されてきたという広瀬統一氏(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)へのインタビューをまとめたもので、主にアスレティックトレーナーや育成に関する内容なのですが、私は次の部分に目がとまりました。

多くのものをスポーツに求めすぎていると思います。楽しむこと、戦うこと、体育的側面、教育的側面、いろんなものを特に育成年代で求めすぎている。

極端にいうと、指導者が外へ向けて「楽しむのがスポーツだ」、というアピールをするならば、徹底的にそうやればいい。それなのに、そのほかの面も多く求めてしまうと、指導者が実際に求めることと子どもが求めることに齟齬が生まれて楽しくなくなってしまう。

企業が経営理念を表明しているように、スポーツチームやスポーツクラブも、もっとはっきり方針やビジョンを打ち出せばいいと思いますね。事前にミッションを外部に対し打ち出して、共感した人が入るようにすれば齟齬も生まれないし、子どもも納得するし、コーチも表明通りに貫く責任が出てくる。

まさにその通りだと思いました。私が横浜ラグビースクールの『ラグビー指導20か条』について、書こうとしていた漠然としたものといいますか、それよりもずっとクリアな説明が、この記事にはありました。勉強になりました。(藤本)

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